ちくふる

ちくふる

築古一戸建てに、自由を。

【木造建築】屋根の構造を知ろう!

f:id:haus_zizi:20191210174012p:plain屋根は建物で一番大切な部分です。
その割には、屋根の上や屋根裏などを見る機会はあまり多くありません。
悪徳業者による詐欺まがいのリフォームが多いのもダントツに屋根関連です。

今回は数ある屋根の中からシンプルな切妻屋根(平面が2つの三角屋根ですね)を例に、一般的な屋根の構造について見ていきたいと思います。

 

 

切妻屋根?

f:id:haus_zizi:20191210162757p:plain

冒頭にサラッと書いてしまいましたが、屋根には色んな種類があります。
その中でも一般的なのは「切妻屋根」「寄棟屋根」「片流れ屋根」です。


切妻屋根は西日本、寄棟屋根は東日本から広まったと言われていて、片流れ屋根は雪国で落雪事故を防ぐ目的で普及したそうです。今ではどれも日本中で見られます。


その他にも色んな形状の屋根がありますが、覚えておくこととしては、接する辺が多くなればなっただけ、雨漏りなどトラブルの原因になるということ。

 

特に「谷」と呼ばれる、接する辺が谷型になっていたり、「立ち上がり」といって屋根が垂直な壁にぶつかっているようなところは要注意です。

まずは「骨組み」

色んなサイトに綺麗な図があるので、ここではザックリと。

f:id:haus_zizi:20191210162811p:plain

【軒桁(のきげた)】【小屋梁(こやばり)】

屋根の重みを一手に引き受け、柱に伝える「天井の基礎」です。なので通常は 120mm × 120mm以上の太い木材を使います。小屋梁と軒桁の接合方法は2つあります(後述)。

【小屋束(こやづか)】

小屋梁の上に設置し、垂直に伸びた上面に「棟木」や「母屋」が乗ります。


【母屋(もや)】と【棟木(むなぎ)】

床で言うところの「大引」でしょうか。大引よりも太めの 105mm × 105mmの木材が使われていることが多いです。棟木だけ120mm × 120mm を使うこともあるようです(未経験)。

【垂木(たるき)】

こちらは床で言うところの「根太」です。この上に野地板やコンパネを張り、アスファルトシートを敷くなどして屋根材を乗せていきます(後述)。

接合方法

小屋梁 × 軒桁

これには「京呂組」「折置組」の2種類あります(分かりやすいように小屋梁の色を変えています)。

f:id:haus_zizi:20191210162832p:plain

一般的な家は殆ど京呂組です。折置組は本当の古民家やこだわった造りの建物で見かけます。強度なら折置組の方が上なのですが、仕口の加工が難しいのが難点です。
京呂組の場合は「かぶと蟻掛け」が一般的ですが、折置組は「渡りあご掛け」からパズルのように複雑な物まで、いろいろあります。
また、最近では図の様に「羽子板ボルト」で結束しますが、昔のものだと鎹(かすがい)でとめてあるものもよく見かけます。

 

小屋梁 × 小屋束

一般的には「短ほぞ」を切ってはめ込んだ後、鎹や接合金物で補強してあります。

小屋束 × 母屋(棟木)

こちらも下側同様、短ほぞではめた上から接合金属で補強してあります。

母屋 × 垂木

母屋側に切り欠きを入れ、細長い金属板を「エイヤッ!」と90度まげたような特殊な接合金物で留めますが、古い建物だと垂木側から釘で打ってあることもあります。

棟木 × 垂木

これも古い建物だと釘で打ってあります。

屋根色々

f:id:haus_zizi:20191210162913p:plain

瓦屋根

図の右側にあるとおり、垂木の上に「野地板」を張り、その上に土を敷いて、瓦を乗せています。土を野地板と瓦の振れるところにだけ盛る場合もあるそうです(見たことないけど)。


「広小舞」は瓦の角度を保つのと、水除けの役割があります。


「鼻隠し」は垂木の端がみっともないので隠すのと、やはり水除けのために設置します。


瓦の一番端(妻側)も垂木を隠すために、赤丸のように特殊な形をしています(これを「けらば瓦」と呼びます)。


「引っ掛け桟瓦」は、野地板の上に細い板を渡し、そこに瓦を「引っ掛けて」固定するやり方です。下に土が入っている場合もあります。

スレート

スレートは野地板ではなく「コンパネ」を張り、アスファルトフェルト」という厚紙にアスファルトを染みこませたシートで防水し、その上にスレートや金属屋根をひいていきます。


雨の侵入防止には、「水切り金物」を使います。

ちなみに、正面からみて屋根が山形にみえる側を「妻」、傾斜になって水や雪が落ちる側を「桁」といいます。

 イラストではちょっと分かりにくい妻側の水切りについては、PanasonicさんのYouYubeで設置方法を紹介していますので、参考までに。


桁側はコンパネとアスファルトフェルトの間に、妻側はアスファルトフェルトの上から角材を打ち、それを覆うように金具を設置してから、その上にスレートがくるようになっています。
「破風(はふ)」は棟や母屋の端を隠すのと、雨水の浸入防止に取り付けられている板です。

棟の仕舞い方

f:id:haus_zizi:20191210162936p:plain

先に面と面が合わさるところで雨漏りする、と書きましたが、まさにその急所が棟。
瓦の場合(図左)、合わせの所に漆喰を盛り、「のし瓦」で押さえていきます。最後に「冠瓦(かんぶりかわら)」を乗せて雨の侵入を防いでいます。冠瓦だけだと、横から侵入する危険がありますが、のしが藁を積むことで「庇(ひさし)」の役割をして雨が入りにくくなるという構造です。

他方、スレート葺きの方(図右)は、スレートの継ぎ目を「棟包み金物」で覆うという作戦ですが、縦方向にビスを打つとそこから浸水してきますので、一旦「棟板」でスレートの端を押さえつつ「ひっかかり」を作り、そこに「胸包み金物」をはめた後、浸水しにくい横方向からビスを入れます。ビス後にコーキングをして終わりです。
上記の他にも、棟の合わせ面に特殊な別の金物を入れるなど、工務店さんによって色々工夫されています。

まとめ

屋根の造りを駆け足で見てきました。
小屋梁と軒桁が「基礎」、小屋束が「束」、母屋や棟木が「大引」で垂木が「根太」等、床構造とパラレルに覚えておくだけで、随分理解しやすくなったのではないでしょうか。
屋根の勾配や母屋の間隔など、もっと詳しい話もあるのですが、本職でもない限り、上記の内容と、あとは現地の状況から判断すれば充分だと思います。